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2026年10月29日 みんな運命だよ それでも 負けてはいけないよ

無趣味である。50歳の頃だった、趣味を持っていないと定年後の老後が豊かになら
ないよ と言われた。釣り、山登り、陶芸、絵画、ゴルフ、音楽…などそれぞれ
自分の楽しみを持って、それぞれがそれについて語り合っていた。
趣味などは、暇になった時に何時でもできる物と思っていたから、それらの会話には
相槌を打つ程度で、全く興味も起こらなかった。
いまだに仕事をしているので、没頭する趣味は起こってこない。
それでも、妻が健在だった頃は、二人で、月2回の映画鑑賞、2か月に1回の観劇。
趣味とは言えないが、二人の憩いの時間として過ごした。
特に観劇は、劇団員が経済的苦労をして活動しているのを聞いていたので、彼らの
支援の為、サークルに入って毎月会費を納め、観劇を続けた。嫌いでもないが、
好きでたまらないというものでない。いわゆる中位(ちゅうくらい)であろうか。
宇野重吉という演劇俳優がいる。俳優で演出家で時に映画監督もした。
名優である。映画俳優でミュージシャンである寺尾聡の父君でもある。
演劇を気軽に見られない地方の人々に演劇の面白さを伝えようとして宇野重吉一座を
作り、全国の地方を回った。その間に肺がんが分かり、肺の一部を切除し、闘病しな
がら全国行脚して回った。その様子を記録した過去のテレビドキュメントが再放送さ
れた、今から42,3年前の記録映像である。
肺を切除し呼吸もままならない、酸素吸入をしながらの演劇。
舞台裏では死と隣り合わせ、息をはぁはぁ吐きながら出番待ち、でも舞台では病を
感じさせない感動の演技。
地方行脚を完了し、しばらくして他界。
息子の寺尾聡が病院に行ったとき、色紙に、精一杯の力で、しかし、キチンと書け
ない。千千(ちじ)に乱れた文字で書いた文が表題の言葉。
『みんな運命だよ それでも 負けてはいけないよ』
息子への遺言だったのか、自分の生きざまを伝えたかったのか、
死を意識していたはず、でも生きることについて語る。
7日後、宇野重吉さん、永遠の旅立ち。
自分にできるだろうか?最後までこれほどの信念を持つことができるであろうか?
『それでも 負けてはいけないよ』言葉を繰り返すうちに、妻が私を励まして
くれているように思えた。

2026.10.29 10:00