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東宝ホーム 本社会社案内・IR情報社長の月刊Blog
令和6年6月6日 行ってらっしゃい、気を付けて

以前『永遠の仔』という小説を読んだ。結末が最後まで分からなくて推理力をかき
たてられる面白い読み物であった。その物語の舞台が松山と酷似しており、松山
の事を書いてあるのでは…と思いながら読み終えた。
作者は天童荒太氏。後で分かったことだが、愛媛県松山出身、松山北高等学校卒業。
家内が卒業した高校、同じ母校であった。それで松山の風景が描かれているのか。
最近毎日新聞の小説で『青嵐の旅人』が連載されていた。
作者は天童荒太氏。新聞の連載は読み逃すことが多く、ところどころしか見ない
ので、本で出版されれば購入してじっくり読みたいと思っている。
本の内容は、伊予松山藩の幕末時の出来事をベースに物語が作られている。
登場人物が伊予松山の方言で語る個所があり、懐かしさがあった。
夏目漱石の『坊ちゃん』という小説にも松山の方言が沢山でてくる。
私が育った時代の頃には漱石の小説ほど方言訛りは酷くなかった。
因みに私が卒業した高校は『坊ちゃん』の舞台になった高校で、漱石が教鞭をとっ
ていた時は『松山中学』と呼ばれ、その後『松山東高等学校』になった。
私も家内も松山出身だから、二人の会話では方言を気にしなかったと思う。
家内は方言色がなく美しい日本語を話すが、私はいつも『関西出身ですか?』
質問されるから訛りがあるのであろう。松山弁と関西弁は似ているのであろう。
伊予松山弁で『行ってきます。』というのを『行ってこおわい。』という。
毎朝会社に行く時は『行ってこおわい。』で通していたと思う。
家内もその言葉がおかしいとも何も言わず、『行ってらっしゃい、気を付けて』
で見送ってくれた。
彼女を失って彼女の良い所だけが思い出される。
仕事の事もよく話したが、彼女は自分の意見を客観的に語り、私の考えをもう一つ
深く検討の機会を作った。頑張ってという言葉は一回も言われた記憶がない。
頑張るのは分かっていたからなのか、夫婦の間でいう言葉でないと思っていた
からなのか、分からない。
毎朝の『行ってらっしゃい、気を付けて』何気ない挨拶的言葉。
それから、どんなことにも、どんな人にも『ありがとうございます。』と感謝の
言葉を返した彼女の人柄にずいぶん救われ、助けられ、導かれていた私がいた
ことを今になって気づいている。もっと早く気づければ彼女に喜んでもらえたのに。
今は部屋に飾ってある彼女の写真一つひとつに『行ってこおわい』と呼びかけ、
彼女が『行ってらっしゃい、気を付けて』と送ってくれている声を聞こうと
耳を澄ます。
帰宅時には玄関で、できるだけ大きな声で、『ただいま、俊ちゃん』と呼ぶ。
悲しみはなかなか遠ざからない。でもそれでいいと思っている。

2024.06.06 09:42